Before/取組み前の課題
・印刷した研修マニュアル
・ノートで管理する来店予約
After/取組みによる効果
・動画化により、教育期間を大幅に短縮
・顧客情報をデジタル化して共有し、サービス品質を向上
株式会社コーフクの取組事例

業種
取り組みテーマ
従業員数
● 人手不足で仕事に追われる日々株式会社コーフクは、埼玉県内に『焼肉セナラ』『高麗房』『ヒョンチャンプルコギ』など高級感のある焼き肉店8店舗を展開する会社。2024年12月1日付で「DX 認定事業者」の認定を取得した。 旗振り役となったのは、常務取締役の安田 守氏。「根っからのアナログ人間」と自称するが、自らアプリを開発するなど、DXの推進力となった。 『DX認定』の取得を決めた背景について、安田常務は次のように語る。 「自分たち自身が決意を固めるということです。『DX認定』という公的機関の承認を受けることで、コーフクがデジタルツール(または、デジタル技術)を使いこなす企業になることを社内外に宣言することで、社外的には採用面での効果が期待できますし、社内的には、生産性を高め、効率的な経営を行っていくことが生き残る唯一の道であるという意思表示が必要でした。また、過去もそうであったように、新しい道具を使いこなした企業は強く生き残ってきました。そういうことから目を背けずに正面から受け止める。いわば、逃げ道をなくして邁進するための決断でした」 経営陣でこうした議論がなされ、DXを推進して『DX認定』を取得することが決まった。2024年夏ごろのことだった。 その後の取り組みは迅速だった。 「やるからには最新の情報を集めて業界の先頭を走るくらいのつもりで、できることは全部やろうというスタンスで取り組んできました」 同社の会議室には、壁にさまざまな標語が書かれたポスターが掲示されている。その中に「人生を謳歌しよう~仕事に遊びにとことん熱中しよう」という項目がある。業務に関する心構えなどが多い中で「遊び」という言葉が入っているのは、異質と言えば異質だが「何のために働くのか」という問いへの答えになっていると言える。 人手不足が年々深刻化している飲食業界。同社も人生を謳歌するどころか、多くの社員が仕事に追われている状況だった。 「今いるメンバーがもっと幸せになるためには、2人でやっていたことを1人でやれるくらいに効率をアップして生産性を高め、利益をしっかり出すという方向に進むべき」(安田常務、以下同じ) まずは、さまざまな現場で仕事の見直しが行われた。 |
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● 厨房でも事務所でも、あらゆる現場にあった非効率洗い出された課題は多かった。 焼き肉店には、枝肉から余分な脂をそぎ落として部位ごとに切り分ける厨房での作業がある。仕入れた枝肉の重さと、脂を取り除いて客に提供できるようになった各部位の重さを測るのは、仕入れの何%が商品として販売できるか、いわゆる歩留まりを定量化するための大事な工程でもある。 以前はそれを部位ごとに切り分けるたびに紙と鉛筆でメモし、脂まみれになった紙を事務所に持って行き、Excelに転記して本社にメールしていた。しかしそれが滞りがちで、各店でデータを取った時期がバラバラになり、原価計算の基になる歩留まりの数字が正確とは言えなくなっていた。 現在は調理場で脂を落とすたびにアプリに打ち込むだけで、Excelやメールを経由することなく、集計もされたデータができる。それにより本社が、最新で精度の高い歩留まりの数字を把握できるようになった。 また、各店の店長はバックヤードの仕事が多く、店舗の事務所にこもって、ルールに従って提出物を作成しなくてはならなかった。それをDXで簡素化することによって、本来の接客業務にあたる時間を増やした。 経営陣にも課題はあった。各店で何がどれくらい売れたかというデータ自体は、デジタルで蓄積されていたが、それを見ることはあまりなく、データとして活用されていなかった。それを過去のものを含めて商品別の売り上げの推移が折れ線グラフで簡単に見られるようなアプリを作り、データを経営に生かせるようになった。 飲食業界の流れの一つとして、注文の際のタッチパネル方式はコーフクでも本格的なDX推進が検討される前から導入していたが、予約の受付をノートへの記入からデジタル方式に切り替えたことで、よりきめ細かなサービスを提供できるようになった。 画面にその日の予約が一覧表示されて見やすくなっただけでなく、顧客管理が容易になり、たとえば前回いつ来店したかというデータを見て「今週もご来店ありがとうございます」とか「お久しぶりでございます」などと挨拶したり、さらには注文情報もインプットされているから「~様、本日も飲み物は~でよろしいですか」などと、顧客に“特別感”を味わってもらえる対応ができるようになった。 人材教育も大きく変わった。コーフクでは約50人の社員と約350人のパート、アルバイトがいるが、経営するのは高級店だけに、スタッフに求めるレベルも自ずと高くなる。その内容は印刷物でマニュアル化されていたが、それを映像化してサムネイルを付けたことで、スタッフの理解が大幅に早まった。 「採用したパートさん、バイトさんをいかに早く戦力化するかは大きな課題でした。しかも弊社のクオリティーを身に付けてもらわなくてはならないので簡単ではなかったのですが、映像化することで店長や社員が教育にあたる時間を4分の1以下に短縮できました」 |
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● 外部委託でなく、現場が自ら開発短期間で各分野のDXが進んだ理由は、アプリの開発などを社内で行ったことである。 「『DX認定』は、DXが完了した企業だけが取得できるものではなく、DXに向けた方針や推進体制を整え、これから本格的に取り組んでいく企業を国が認定する制度なんです。我々は、その時点ではまだ何もできていなかったし、経営陣にもデジタルにアレルギーを持っている人が多かったのですが『DX認定』を取得し、いわば看板を背負ったことで、心理的な障壁が減ったこともあり、スタッフの中から『自分、やってみたいです』と手を挙げる人が出てきました」 業界でよく使われているシステムを利用したものもあるが、外部に依頼してシステム開発をするのではなく、現場のスタッフが自分の仕事に関わるアプリを開発した。 「大手さんは、システム開発の専門部署を作るところが多いですが、開発したものと現場のニーズにズレがあったりする、という話を聞きます。我々は現場の人間が『もっとこうしたい』という発想で作るものなので、そういうことはほぼありえないです」 多くの人が、アプリ開発に携われた背景は、AIの活用に尽きる。 「Geminiも使いやすくなりましたし、今はClaudeを使っています。Claudeはちょっと次元が違いますね。テキストを打ち込んでアプリが作れるんですから。だから弊社オリジナルアプリの開発経費はClaudeの費用だけです。特に公的支援も得ていません」 前述したように、安田常務自身も10個ほどのアプリを作ったという。 |
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● 少人数で仕事を回す土台ができつつある『DX認定』取得から1年半以上が過ぎた。現在取り組んでいる課題はなんだろう。 最近できたものですが、損益計算書を見て予算と実績で大きな差異が出ているときに、その背景を調べるのにいろいろな科目を開いて見なければいけなかったのを、ワンクリックでわかるようにしました。ひと昔前なら、売れるレベルだと自分で思いましたよ(笑)。今はその気になれば、そういうのも自分で作れちゃうんですね」 DXによってコーフクでは、現場の事務作業や人材育成、経営の管理システムなどは大いに効率化された。では短縮された残りの時間は何にあてられているのか。安田常務は語る。 「今は食材費も人件費もどんどん上がっているので、もっと少ない人数で効率よくクオリティーの高い商品とサービスを提供しようというのがテーマなんです。そういう意味では、空いた時間に楽ができるかと言えば、そうではないですね。少ない人数で回していく土台をいま作っているところです」 だが、前述した「仕事に遊びにとことん熱中しよう」という一文は、空文句ではない。スタッフが心身ともに余裕を持つことで、遊びはもちろんのこと、逆に仕事にも熱中できるようになる。同社がDXを進める目的の一つもそこにあるのではないだろうか。安田常務に質問すると、こう答えてくれた。 「本当にそうだと思います。弊社は、その場でずっと停滞するのではなく、新しいものを求めていこうとスタッフに呼びかけています。飲食業というのは、毎日の業務が定型化しやすい面がありますが、その中で、自分のいろいろなスキルを突き詰める、という向上心のある人は、DXが楽しいと思います。弊社のそういう方向性とDXがマッチして、我々に必要なものだというところで取り入れているんです。まだ道半ばですけどね」 土台ができつつあり、「人生を謳歌しよう」という社内標語も現実味を帯びてきたのではないか。 |
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