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アイシン産業株式会社の取組事例

IoTシステムを活用した汎用加工機の生産性、品質向上を目指す

アイシン産業株式会社

業種

  • 製造業

取り組みテーマ

  • IoT活用

活用した支援

  • AI・IoT・ロボットシステム導入トライアル補助金
事業内容 生産用機械器具製造業・粉体用供給排出機器などの製造販売

Before/取組み前の課題

・標準化された加工条件が無く、技術者各人の経験と技量任せ(暗黙知)であるため、技術力向上の学習が困難。
・汎用工作機械を用いた切削加工技術において熟練者と非熟練者との差が大きく、製品品質および生産力のばらつき原因となっている。

After/取組みによる効果

・熟練者の作業データを蓄積、分析して、適切な加工条件(形式知)を示すことで、非熟練者への教育が効率的効果的になった。
・非熟練者の技術力が早く高まり、製品品質の安定化と生産力が向上した。

◆作業者の技量と経験任せの加工が、生産力と品質のばらつきを生む

 1972年7月創業。粉粒体供給排出機器を中心とした生産用機械器具を製造販売する川口市のアイシン産業株式会社は永く課題を抱えていた。当社の主力製品群は多品種少量生産であるため、旋盤等の汎用工作機械を加工に用いることが多く、作業者によって加工時間や加工品質に大きく差が出てしまい、ばらつきを抑制することが容易でないことである。
汎用工作機械は加工対象一つひとつの状態に合わせて、柔軟に工作対応できることが強みである反面、作業者の技術力と経験が品質・生産性に直結し、また技術と経験を他者に伝えることも難しく、優れたノウハウが属人化してしまう弱みを持つのである。
この汎用工作機械の強みを活かしつつ、作業者間の加工品質と生産性のばらつきをIoT技術を用いて解消できないか方策を検討していたところ、埼玉県産業振興公社の「AI・IoT・ロボットシステム導入トライアル補助金」を知り、この補助金を活用して課題解決に向けた取り組みに走り出した。







◆ IoTシステムから、作業者の暗黙知を形式知(見える)化へ

 これまでも自社内で生産改革プロジェクトを立ち上げ、製品品質の向上や生産性向上について活動を行ってきた経緯があった。ストップウォッチによる工数の把握にはじまり、各種センサーを用いて既存設備からの情報取得の方法を探り、IoT化を自社独自に検討してきたが、各種工作機械とのインターフェースおよび各種センサーの選定や無線LANの設定など煩雑で労力が大きいことが予想されたので今回、専門のIT事業者に協力を得て、より効率的効果的にIoT化を進めて行けるようにした。
決して順調とは言えなかったが、それでも計画期間内に、汎用工作機械に各種センサーを取り付け、①加速度(振動)、②回転数、③電流値(加工負荷)といった加工データを取得し、無線で社内サーバーに蓄積してグラフ化することで、加工技能が「見える化」するシステムを構築することができた。
そして取得蓄積したデータから、熟練技能者は「作業時間」と「加工品質」との絶妙なバランスを常に考えながら汎用工作機械を操作していることが明確に示された。状況に応じて敢えて意図的に切削量や切削速度を落として加工していることが数字に現れ、またビデオ撮影での作業風景との照合で確認できたのである。

◆ 「見える化」が新たなステージへのステップアップに導く

 このIoT化の取り組みについて前述したように、計画通り順調に進んだわけではなく、失敗と反省を繰り返してきた。旋盤の回転盤にセンサーを設置し、回転数と切り込み量、送り量の計測を試みたところ、回転盤に設置したセンサーが想像以上の遠心力によって吹き飛び、壊してしまったこともあった。またこうした不慮の事態への対応や装置類のキャリブレーションの期間といった余力時間を当初計画に盛り込んでいなかったことも進捗管理を苦しめる要因となった。しかしながら机上では決して得られない経験とIoT導入のノウハウが身についたことは事実である。
そして、今後進めるべきことは、熟練技能者の作業データから加工方法の最適解を検討し、標準作業工程へと落とし込むこと。そして非熟練者への指導方法をこれまでの感覚的なものから、「定量化」されたデータに基づく指導や技能伝承へと切り替え、熟練化へのスピードアップと加工時間の短縮を進めることである。また現在当社では、工場内のIoT化に留まらず、IoT対応した自社製品の開発を視野に入れている。

 

アイシン産業株式会社

所在地
〒334-0012 川口市八幡木3-15-17
URL
https://www.aishin-sangyo.co.jp/
支援した
機関
公益財団法人埼玉県産業振興公社