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日本シーム株式会社の取組事例

「できることから段階的に」 コミュニケーションツールの 活用により 意思決定スピードが 1週間⇒1時間単位に

日本シーム株式会社

業種

  • 製造業

取り組みテーマ

  • デジタル化
  • クラウド活用
  • AI
  • IT活用

活用した支援

  • IT導入補助金活用
事業内容

廃プラスチックのリサイクル機器製造販売

Before/取組み前の課題

・週1回の全体会議で意思決定
・すべて受注生産のため、見積り作成に3日かかる
・設計・製造・納品工程で情報の行き違いから、手戻り多発

After/取組みによる効果

・コミュニケーションツール導入により、トップの意思決定も最短1時間で
・過去のデータ共有などにより、見積り作成が半日に短縮
・納期短縮120日⇒90日

◆アフターコロナの業績回復に向けて社内をDX化

日本シーム株式会社は川口市で廃プラスチックを再生する中間工程【粉砕、洗浄、選別、脱水乾燥、造粒】 を担う機械を開発製造する、従業員数65名の企業である。
同社は2018年ごろからデジタル技術を活用した経営改善に着手し、短期間で目覚ましい成果を上げてきた。社内でDX推進を担当するSDGs事業部マネージャーの鈴木健太氏に、導入の経緯について伺った。同社は1977年の創業以来、廃プラスチックの再生プラントに関わる多くの特許を取得し、高い技術力と提案力を強みとしている。しかし、DX導入前はデジタル技術に対する社員の精神的なハードルがあった。毎週月曜の全体会議で意思決定を行っていたが、資料はすべて紙ベース。デジカメで撮った写真をPCに取り込んで資料を作り、社内のコミュニケーションも電話・LINEが中心、といった状態であった。世界的に廃プラスチックの環境汚染が問題となる中で、同社への新規取引の引き合いが増え、社員が全国の顧客のメンテナンスに訪問する機会も増えた。案件と社員の人数が増えるにつれて、週1回の会議では意思決定スピードが間に合わなくなってきた。

最初のデジタル化は、2018年ごろから導入した、簡易なビジネスチャットツールであった。社内の困りごとを共有し、解決するコミュニケーションツールとして運用を始めた。デジタルツールに慣れない社員も多いことから、最初は「慣れない社員でも使えること」を優先してツールを選定した。

 

2020年からのコロナ禍で一時的に売上が落ち込んだものの、「アフターコロナの需要増に向けて、今のうちにジャンプアップの準備をしよう」というトップの判断で、本格的なDX化に取り組み始めた。

◆「できることから」「費用をかけずに」段階的にDX化を進める

2020年に営業部門でマーケティングツールを導入。顧客管理・問い合わせの一括管理・担当の割振り・メルマガやSNSの作成・SNSタグからの流入分析などができるようになった。次にMicrosoft Teamsを導入し、 SharePointと呼ばれる共同ファイル保管庫を作った。この機能を使うことで、WordExcelPowerPointなどのファイルを、営業部メンバーが共同編集できるようにした。これにより見積り作成のスピードも、精度も上がった。名刺管理ソフトはマーケティングツールと連動させ、例えば展示会で名刺交換した際の会話が、実際の商談となったときに引き継がれるため、商談進行がスムーズになった。

 同社のDX導入の大きな特徴が「できることから、費用をかけずに始める」「使って慣れてから、徐々に高度なツールに切り替える」という方法である。スケジュール管理を例に挙げると、元々、営業担当者のスケジュール管理はホワイトボードへの書き込みだった。顧客が全国に亘るため出張が多く「出張先で、誰がどこにいるのか分からない」という問題が多発していた。そこで最初は無料のGoogleカレンダーでスケジュールを共有し、全員が慣れてから多機能のグループウェアに移行していった。

設計部門では図面管理ソフトを導入した。同社の商品は基本的にカスタムメイドだが、過去の設計図面を顧客別に検索したり、似たような仕様の図面を検索したりできるため、設計スピードが上がり、メンテナンスもしやすくなった。

生産管理システム導入にあたっては、IT導入補助金を活用した。見積作成から受注登録、製番分け、担当分け、進捗管理、請求までを一元管理できるソフトで、これにより作業工程の「抜け漏れ」といったミスが激減した。

◆法改正に伴うビジネスチャンスに、AI活用等で対応していきたい

DXの積極活用により経営の効率化を図った結果、2018年度には8億円程度だった売上高が、2025年度には21億円を達成する見込みだという。

数値的な成果では、営業部門で従来3日程度かかっていた見積作成が、過去のデータ参照や共同編集により、半日程度でできるようになった。週1回の会議で行っていた意思決定は、コミュニケーションツールの導入やペーパーレス化により、最短1時間以内でトップの決済が取れるようになった。さらに製造部門では、生産管理システムの導入により従来1120工程あった粉砕機の工程が800工程に短縮され、納期は120日から90日となった。

近年、廃プラスチックによる海洋汚染やリサイクルへの関心が高まっており、同社の顧客は従来のリサイクラー(産業廃棄物処理事業者)に加え、大手消費財メーカー等が増えてきている。2026年4月からは、製品に対して再生プラスチックの使用割合を義務化する「改正資源法」の施行が予定されている。

このチャンスに向けて同社では、生成AIのさらなる活用を検討している。既に資料や議事録、図面作成などには生成AIを使いこなしているが、今後は業務効率を上げるため、メールの返信や動画作成などに生成AIを活用していく考えだ。同社は、技術力・提案力、さらにDXやAI活用により、将来的には「世の中からゴミをなくし、すべて再資源化していきたい」と考えている。

最後に、特に中小規模の製造業のDX導入、IT補助金活用について、鈴木氏からアドバイスを頂いた。

「従業員数30人を超えたら、DXツールの導入を検討したほうが良いです。今使っているツールから近い、親和性の高いものから手を出すと良い。私もそうでしたが、どこの会社にもこういったことが得意な人がいるはず。その人に任せて、やらせてみることをお勧めします。

IT補助金は、導入への思いや、費用対効果の数字を厚く盛り込む必要があります。導入前で費用対効果のイメージがつかない場合は、導入する製品の営業担当者とすり合わせて作成することおすすめします。資料作成にあたっては生成AIを補助的に活用することで、簡単に伝わりやすい資料を作ることができます。」

日本シーム株式会社

所在地
〒334-0054埼玉県川口市安行北谷665
URL
https://www.nihon-cim.co.jp/
電話
048-298-7700
FAX
048-298-7750