Before/取組み前の課題
・時間がかかるため抜き取り検査
・不良品が1枚あれば全数返品、再検査
After/取組みによる効果
・すべての鋼板を自動採寸
・返品ゼロ
株式会社相澤鐵工所の取組事例
業種
取り組みテーマ
活用した支援
埼玉県川口市の株式会社相澤鐵工所は、1923年創業で今年102年目を迎えるシャーリング(金属板のせん断加工機)とプレスブレーキの製造メーカーである。シャーリングのトップシェアを誇り、全国に累計4万台以上を出荷してきた。
過去には厚板の全自動シャーリングシステムARS-1020DAが第66回日刊工業新聞社 十大新製品賞 中堅・中小企業賞を受賞するなど、シャーリング加工前後の様々なプロセスの効率化を進め、業界内でも高く評価されてきた多くの実績がある。 ただ、金属加工前後の「段取り工程」、「後処理工程」、「検査工程」は人手に頼っているのが実情であった(大企業向けの定型・大量納品など、専用設計の自動化ラインを除く)。 |
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適切にメンテナンスを行えば買い換え周期の非常に長いシャーリングは市場がほぼ成熟しているが、前後の作業を含めて全く新しい製品を提供することで、多くの顧客が持っているニーズに応えたいという思いがある。
同社が商品化を進めているのは自動検査機である。切断した鋼板の寸法測定は目視・手作業が必要で時間を要するため、すべての商品の寸法測定を行うのは現実的ではない。例えば1,000枚の鋼板を納品する場合、最初の1枚のみ寸法測定を行い、規格通りであれば残りの999枚は同条件で連続加工を行い出荷するケースが多い。万が一許容誤差を超えた鋼板が1枚発生すると、「全数返品・全数再検査」する業界慣習があり、発生頻度は稀でも発生時にはユーザーに大きな負担がかかる。 最近では各業界で求められる品質レベルが高まっており、全数の寸法データの提供を求める企業も実際に出てきているという。 |
不良品返品の原因は寸法だけではないため表面キズの検出・判定機能も研究しているが、ユーザー聞き取りの結果、より定量的に判定しやすく十分なニーズのある寸法測定機を先行して実用化した。
岩手工場で検討を進めるにあたり、公益財団法人いわて産業振興センターから紹介を受け |
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岩手大学の明石卓也准教授(現:岡山大学教授)との共同研究を開始。一般的に画像認識というと「最近の流行り」と一括りにされがちだが、静止した物体と動く物体は難易度やアプローチが全く異なる。検査は自動工程の一部となるため、コンベアスピード、材質特有の表面光沢、付着した機械油、ムラの影響も考慮する必要があり、様々な検討を進めている。
時機良く若手の技術者も採用することができた。電機系ハードウェアの経験と趣味だったプログラミング能力に加え、会社でロボット・電機の内容を更に吸収し、共同研究先の明石教授に学んで画像認識の能力も大きく伸ばしており、この社長直轄のプロジェクトに欠かせない大きな推進力となった。 令和5年度に経済産業省の成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)に採択され令和7年度が支援期間の最終年度となる。まもなく企業での試験運用開始を予定しており、キズ検出機能付きの自動検査機は2030年までの商品化に向けた取り組みを進めている。 検出した不良品を取り除く技術も相澤鐵工所では既に有しており、画像認識ロボットを用いた製品の集積装置と組み合わせることによって、検出した不良品を除外した集積が可能となる。 完成した寸法測定機はコンベア上を流れる製品の寸法を±0.2mm程度の精度で測定することができ、2025年7月に開催された展示会MF-TOKYOにて参考展示した。今後は複数の材質への対応(主にキズ検出)、検出可能な製品サイズの向上、コンベアスピードの上昇によって利便性を更に高めることを目指している。 この自動検査機(寸法測定機)の導入によって検査人員1名の業務を代替できると見込んでおり、人材不足が進む製造業において、作業者は別工程に注力することができる。 |
相澤鐵工所の主な顧客層は従業員5-10人の町工場。世代交代や働き方改革で多くの熟練職人の技術が失われていくのを肌で感じ、自社の技術でそれらを補って製造業に貢献したいと考えている。
現在は第4次AIブームであると言われるが、社長自らが大学在学中に制御工学を専攻し、AIにも触れていた経験を有しており、現在も自身が先頭に立ってプロジェクトを推進している。 |
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検査の自動化は多くの業界関係者が夢見た将来像だが、技術の進展を察知し自動検査機もいち早く開発することができた。
現在のキズ判定は納品先の主観によることが多く、良品と不良品を分ける科学的な根拠がない。目指す将来は、相澤鐵工所が作る検査装置によって大量のデータを収集し、科学的にキズかそうでないかを判別できる「この検査装置がキズと判定したらキズ」という世界である。 「そこまでいったらDXだね」と相澤社長は笑う。 ユーザーの声に耳を傾け、ユーザーの役に立つものを作りたい、その取り組みが自動検査機の開発につながっている。自動検査機の先にある目標は、切断後の梱包作業の自動化である。手間がかかるため、全自動シャーリングシステムの手待ち時間は主に梱包に充てられている。この梱包作業を自動化しようと考えている。 最後にこれからDXを進めようとする企業に、アドバイスを頂いた。 |
株式会社相澤鐵工所