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株式会社和銅鉱泉旅館/代表取締役 町田啓介 氏の取組事例

小さなDXチャレンジが 着実な生産性向上につながる

株式会社和銅鉱泉旅館/代表取締役 町田啓介 氏

業種

  • 飲食業
  • 宿泊業

取り組みテーマ

  • 広報戦略
  • IT活用

活用した支援

  • IT導入補助金活用
  • 埼玉県経営革新デジタル活用支援事業補助金
事業内容 宿泊施設、菓子製造販売、レストラン経営

Before/取組み前の課題

・他業種、8拠点の売上データ集計に時間がかかる
・100名以上の従業員のシフト管理に時間がかかり、確認作業が多い
・日報、月報の作成に手間がかかる
・伝票の収集に時間がかかり、経理業務が逼迫しやすい

After/取組みによる効果

クラウドソフトを用いて一括DX化。
クラウドレジ、クラウド勤怠管理、クラウド会計、クラウド販売管理を導⼊することで、まとめて解決。

【課題】 新店舗出店を機に、クラウドシステム導入を小規模に実験

株式会社和銅鉱泉旅館では、秩父市黒谷の「ゆの宿和どう」を始めとした宿泊施設を2店、「秩父菓子処 栗助」など3拠点での菓子製造販売、レストランの経営など多業種を経営している。代表取締役の町田氏は、秩父地域の観光資源開発や地域おこしへ総合的に寄与してきた一方で、IT技術やデジタル化に関する興味も強く、情報収集をしていたという。
町田氏「弊社は業種がいくつも分かれていて、子会社を含めた拠点数は8箇所あります。パート、アルバイトを含めた社員数は100名を超え、年齢層も10代から70代まで幅広く所属しています。日々生じる売上や日報、タイムカードなど、取り扱うデータの種類と量も多いので、業務にかかる負担が大きいことが以前からの課題でした。⽣産性の向上を図るため、1⼈多役のマルチタスクな働き⽅を研究して実施するべくDXの情報収集を進めていました」
中でも町田氏が着目したのは、クラウド型のPOSレジシステムだった。同様のサービスは近年発展がめざましく、各種売上データの記録・集積に加えて、分析や管理をリアルタイムかつローコストに行えるようになってきた。
「クラウドレジに興味はあっても、38室の部屋数を抱え、180名を収容する『ゆの宿和どう』では、急に大きなシステム移行を行うのは難しい。そこへ新たな古民家リノベーションホテル『番場おおそね』と、秩父芋菓子専門店『芋うらら』の出店計画が立ち上がり、スマートロックシステムなどと共に、クラウドレジも導入してみることにしました。それぞれ小規模な店舗なので、効果も見えやすいと考えたんです」
 
2022年にオープンした『秩父芋菓子専門店 芋うらら』『番場おおそね』
2022年にオープンした『秩父芋菓子専門店 芋うらら』『番場おおそね』

【導入・効果】 売上や在庫データをリアルタイムに把握、管理作業の負荷も大幅に軽減


  クラウドレジ導入に至るまで、町田氏には旅館のネット予約システムやAIによるQ&Aシステム導入などの経験はあったものの、DXそのものの定義理解や、どんな技術があり、どれを導入するのか、またどのように従業員の理解を得るかというハードルがあったという。
「始めはすべてが霧の中でしたが、助言を受けながら理解を進めました。課題が見えていても、ふさわしい機器やサービスの選別が難しく、ここに最も時間がかかりました。しかし近年分かりやすいサービスが出てきたことで、具体的に何を導入するか決めることができました」
新規出店した店舗で1台のクラウドレジを導⼊してみると、クラウド関連機器について理解が深まり、更に続けてクラウド勤怠管理、クラウド会計、クラウド販売管理を導⼊した。
「ひとつ経験してみれば、データがどのように管理できればより便利になるのか想像がつくようになります。クラウド化によって、新規出店した2店舗の総務や経理に関する業務はスタッフ一人で行えているので、感覚的に従来の業務量から3~4割ほど効率化できたと感じています」
新店舗からクラウドシステムの導入先を拡大するため、IT導入補助金、埼⽟県経営革新デジタル活用支援事業補助金。全8箇所の拠点で⽣じるデータをリアルタイムで集計できるようになると、店舗での閉店時処理時間は大幅に短縮。間違いも少なくなり、⽬に⾒えて従業員の負担が減った。勤怠管理の集計作業も時間短縮でき、クラウド会計導⼊でも時間の余裕が増えた。
「こうした大きなシステムの変化については、時間をかけて従業員の理解を得ました。従業員といっても、弊社では正社員、アルバイト、パートに大きな区別を付けないので、新人からベテランまで、全ての人が抵抗なく新しいシステムに馴染めるよう、地道に周知を続けました」

 

【展望】 商売もDXも、慌てず焦らず。小さな成功を積み重ねる

「宿泊業分野でのDXも進めていて、間もなくAIがレベニューマネジメント(需要に応じて料金が変動するマネージメント手法)を行うシステムも稼働する予定です」と語る町田氏。先駆的なデジタル化に興味を持ち、実際の導入まで着実に歩みを進めることができた背景には、ビジネスの拡大に必要な発想が応用されていた。
「宿泊業から菓子の製造業に参入するとき、まずは商品に関わる仕入れや売上のデータを理解し、分析するところから始めました。また、地域資源、自社商品の開発のときに気をつけるのは『商品寿命が長く続くかどうか』。つまりサステナブルであることです。地域に密着して観光事業を拡大してきたので、地元の人やあらゆる業者、人のネットワークはとても大切にしています。データ分析はそのままDX化に通じ、作業負担の軽減は、人を大切にすることや持続可能性に通じます。DX化の選択は思い切った決断というより、これまでの商売の地続きにあるものだったのかもしれません」
これからDXに取り組もうという企業に対してアドバイスを求めると、町田氏は以下のように締めくくった。
「まずは自分(経営者)がやるべきことを理解して、外部へ丸投げしないこと。コストパフォーマンスのよい、小さなスタート地点を探すこと。慌てず焦らず、時間をかけて定着を図ること。これが大事だと思います」
 

 

株式会社和銅鉱泉旅館/代表取締役 町田啓介 氏

所在地
埼玉県秩父市黒谷822-1
URL
https://www.wadoh.co.jp/