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日本電鍍工業株式会社の取組事例

独自の生産管理システムで受注から生産、在庫管理まで一連の工程のほか、資材管理、従業員勤怠、会計処理を一括管理

日本電鍍工業株式会社

業種

  • 製造業

取り組みテーマ

  • システム開発
  • IT活用
事業内容 電気めっき加工業(金属表面処理)

Before/取組み前の課題

・めっき加工が個々の従業員任せで、技術がうまく共有・継承されていない
・一点物から量産品までカバーする「多品種変量生産」のため業務が煩雑
・めっき加工が複雑化したほか、新しい表面処理も増えて営業品目が多様化し、従来のシステムで対応できない

After/取組みによる効果

・受注段階で製品の仕様、作業手順などを記載した手配書(オーダーシート)を作るため、それに基づいて従業員が作業できる
・資材費や製品の受注額などが表示されるため社員にコスト意識が生まれる
・製品に不良が出た場合の情報を共有でき、失敗の経験が次に生かせる
・どの受注品がどの工程にあるかが表示できるため営業担当の従業員も全体の流れが把握でき、発注者に説明もしやすい

【課題】 めっき加工の職人世界で、どうやって技術を継承していくか

 1958年2月設立の表面処理業会社。めっき加工からスタートし、現在は貴金属を中心とする電解めっき、無電解めっきのほかアルマイトやチタンの陽極酸化など多様な表面加工を取り扱う。
めっき加工は古くは職人技の世界だった。例えば、ある金属に金めっきを施す場合、事前に何の薬品で洗浄するか、前段階で何のめっきをするかなどは職人任せで、それぞれの感覚でやっていた。不良品を出しても職人が黙っていたり、内緒で直してしまったりしたこともあったという。
こうした閉鎖的な職人の世界で人材を育成し、技術を継承していくにはどうしたらいいか。表面加工の技術は多様化し、2008年に導入した既製品のオフィスコンピューターでは対応できない。さらに多彩な商品を取り扱う中で、さまざまな形で持ち込まれる注文窓口も整理しなければならなくなっていた。日本電鍍工業は2017年、受注の段階から生産工程まで一括して管理できるシステム開発に乗り出した。

 

【導入】 めっき加工の仕様や注意事項、受注額も全てオープンに

 福井県のシステム会社と3年越しの共同開発の末、2019年に本格稼働した新システムが「TKiS(ティーケーアイズ)」だ。まずは受注段階で営業部がTKiSを使い、加工方法など具体的な注文内容を手配書(オーダーシート)に起こす。
手配書にはめっきの仕様のほか、処理する上での注意事項も記入されている。続いて生産部が手配書を見ながら、加工する品物を工程上の行き先に応じて治具に引っ掛ける作業をする。この段階で手配書のバーコードを端末で読み取ると、手配書を転載したセルカード(セルロイド製でめっき液にも漬けられる)が発行される。これを品物と一緒に工程に流す。
実際の工程では担当者がセルカードの内容を確認した上で加工処理をする。細かな手順も書き込まれているし、同じ品物で不良品が出た時のデータも入力してあり、どんなことに注意すればいいかも分かるようになっている。
めっきが仕上がると品物は再び生産部に戻り、出荷作業。ここでセルカードのQRコードを読み取ると検査が出来る、手配書のバーコードを読み取ると売り上げもわかる仕組みだ。

 

【効果・展望】 「会社が変わるのは良いこと」社員の意識も変わった

 極端に言えば、かつては結果さえ良ければ何をしてもいいというのが、めっき加工だった。伊藤麻美社長はそう振り返る。絶対的な加工法があるわけではなく、職人の感覚任せ。だからこそ教育が重要なのだが、お客様は待ってくれない。それなら加工法をある程度固めればいい。こうして導入した「TKiS」のシステムは同社の技術継承に重要な役割を果たしている。
「TKiS」が資材の購入価格や製品の受注額までオープンにしていることは、社員のコスト意識向上に役立っている。「忙しかった日は『きょうの売り上げいくらだった?』と聞かれます」と営業課の仲原美咲さん。逆に「こんな価格で利益出るの?」と尋ねられることもあるという。
「TKiS」によって何が変わったのか? 伊藤社長は「売り上げはいろんな要因があるから一概に言えませんが、残業は減りました」。仲原さんも「前は2時間かかっていた棚卸が今は20分で済みます」と口をそろえる。
新しいことを始める時、反発が起こるのは世の常。「TKiS」の導入に伴い社屋の各所にカメラを取り付けた時も「監視カメラか」と社内がざわついた。
しかし貴金属を取り扱うことも多い同社で、例えば高価なものがなくなったりした時、映像があれば社員を守れる。そのことが分かってから誰もカメラを気にしなくなった。伊藤社長は「会社が変わっていくことは良いことなんだと、前を向く社員の意識が強くなったかなと思います」と語る。

 【参考】取組事例動画

日本電鍍工業株式会社のが、Claris ジャパンのYoutubeに掲載されています。こちらも是非ご覧ください。