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伊藤鉄工株式会社の取組事例

データの自動収集により生産性向上、社内に吹き始めたDX化の風

伊藤鉄工株式会社

業種

  • 製造業

取り組みテーマ

  • IoT活用

活用した支援

  • 公的機関支援
  • IT導入補助金活用
事業内容 管材製品・景観材製品・キッチン用品等鋳物製品製造

Before/取組み前の課題

・加工・組み立て設備の稼働状況を人力で測定していたため、継続的なデータ収集ができなかった。
・包装機での生産個数を人力で数えており、データが蓄積されず現実的な目標値が設定できていなかった。
・効率化・生産性向上に目を向ける社員が少なかった。

After/取組みによる効果

・加工機の稼働状況をデータ化し、リアルタイムに可視化できるようになった。
・包装機の生産状況をリアルタイムに可視化し、現状に合った目標設定ができるようになった。
・効率化・生産性向上を意識する風潮が社内に広がってきた。

◆改善が続かない、人力でのデータ収集の限界

伊藤鉄工株式会社は昭和6年の創業以来、鋳造から加工、組立、梱包、販売までを一貫して行う鋳物メーカーである。創業時のストーブ製造から始まり、現在は管材製品、景観材製品、キッチン用品などを扱う。
長年抱えている課題は生産性を上げること。そのためにまずは現状の把握が必要である。同社では、これまでストップウォッチを使用して製品を加工するサイクルタイムを計ったり、人の目で定点観測をして作業員の動きを把握していた。しかし、扱う製品の数が多いこともあり、この方法では時間の割に集まるデータ量が少なく、データをもとにした改善を継続することができていなかった。
「IoTが広まった頃から、他社の事例を見たり聞いたりして勉強を続けていましたが、実際にプログラムを書いて導入するところまではいきませんでした。ハードルが高かったです」と製造本部 生産管理G長のチャン クォック トアン氏は語る。
一歩を踏み出せずにいた頃、チャン氏は埼玉県産業振興公社が主催し、埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)が講師を務めた「埼玉県ものづくりAI・IoT化支援化事業・シングルボードコンピューター(Raspberry Pi)研修」に参加する機会を得た。コロナ禍で集合研修はできなかったものの、教材やRaspberry Piなどの機材を一式受け取り、基本的な使い方を講義動画で学びながら、実際に手を動かした。プログラムを書いてみて、「意外と簡単に動きそうだな」と感じたチャン氏は、その後、実際の機械に取り付けてみることにした。

◆サポートを得てスタートしたDX、データ収集を自動化し現状を把握

まず最初に、粉塵の影響がない比較的クリーンな環境下にある包装機からスタート。包装機の切断刃物にリードスイッチを取り付け、ON/OFFした回数のデータをRaspberry Piで受信する。Raspberry Piではデータ記録やグラフ化をし、ローコードビジュアルプログラミングツール(Node-RED)のダッシュボードで生産状況と稼働回数を可視化できるようにした。これにより、包装した製品の数を手作業で数える必要がなくなり、担当者の無駄な時間を減らすことができた。また、適切な目標値を割り出すことができ、実績と比較して改善点を探すことができるようになった。
この仕組みを横展開し、電力使用量が多い金属加工用のNC旋盤に導入したいと考えた。同時にIT導入補助金の活用も検討し、日本生産性本部へ補助金申請したところ、採択を受けることができたため、本命であるNC旋盤の稼働率を上げるべく邁進することになる。
NC旋盤では、Raspberry Piと電流センサーを使用した。旋盤には3つの状態(停止・待機・加工)があり、状態ごとに電流値が異なる。これに着目したことで、旋盤の状況把握の見通しができた。まず電流センサーをブレーカーに取り付け、測定した電流のデータをRaspberry Piに送り、Node-REDのダッシュボードで旋盤の状況と、起動してからの経過時間に対する加工時間の長さをデータとして収集・可視化し、手元のiPadや事務所のモニターで24時間リアルタイムに確認できるようにした。なお、旋盤周辺は粉塵が舞う環境下であり、Raspberry Piへの悪影響が懸念されたため、旋盤から離れた場所にあり、ボックス内に保護されたブレーカーにセンサーを取り付け、可用性・信頼性にも配慮した。
これまでIoT導入にあたり、工場内の機械を止める必要もなく、普段の業務に支障がなかったことから、導入に反対する意見もなく、スムーズに作業を進められたことは大きい。また、心強かったのは、SAITECの先生が、研修後も相談や質問に快く対応してくれたことである。「迷っている企業の方がいたら、まずは講習に足を運んでみてください。その場でプログラムを書いて実践できるので自信につながります。やってみてよかったです」とチャン氏は言う。

◆生産性向上のための改善策を考案、効率化の流れを社内に広げた

現段階での効果として、NC旋盤の稼働状況を把握したことで、待機電力の無駄が分かってきている。また、漠然と定めていた生産数の目標値を現実的なものに改善することができ、現場の士気向上につながっている。機械や人のオペレーションの効率化だけでなく、采配についても最適化につながる可能性を秘めていることが分かってきた。
しかし管理対象となる製品や機械に合わせてプログラムを改善すべき箇所もあり、現状、欲しいデータがすべて集められているわけではない。必要なデータを正確に収集するのが目先の目標であるが、そのために、プログラムを理解して組める人員を増やしていくことが急がれる。
次のステップとして、収集したデータをもとに、機械・人の状況を分析し、改善策を話し合い、最適な配置・動き・指示を考案していきたいと考えている。「社員みんなで共通の認識を持ち、効率化と生産性向上という同じ目標に向かって楽しく進んでいきたい」とチャン氏。そのために、集まったデータや成果を見える化して日常的に意識づけすることにより、社員の意識改善を促したい。最近、社内が「無駄を見直そう」という雰囲気になってきており、変化の種が芽を出し始めているのを肌で感じる。DX化への道は始まったばかりだ。

 

伊藤鉄工株式会社

所在地
〒332-0011 埼玉県川口市元郷3丁目22番23号
URL
http://www.i-g-s.co.jp/
支援した
機関
埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)、埼玉県産業振興公社